ご報告がございます。
私、フリースキーヤー河野祥伍は2020年2月3日に左前十字靭帯を断裂いたしました。
そこで、全十字靭帯の断裂時の様子、断裂後の通院、手術に至るまで、リハビリ、そこから実際スキーを履くまでの流れを記載しておけば、今後靭帯断裂という怪我をしてしまった方の為になるのではないか、と考えこちらで記事にしたいと思います。
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さて、僕の場合、事の発端は2年以上前にさかのぼります。
2018年の2月初旬にカメラマンさんとの撮影が入り、いつも通り飛んだり跳ねたり、時々滑ったりしながら撮影をしておりました。撮影は問題なく進み、3日ほど続いた撮影も、ラスト一ヶ所の撮影に差し掛かった時の事です。1m程度の落ち込みを飛ぶシーンで、ミステイクが続き、「こんなところでどんな一枚が撮れるんだろうな」、「早く決めて終わりにしちゃいたいな」という気持ちが芽生え始めた数本目。
いつも通りドローップ!!と声をかけて上から滑り降り、何度も飛んでいる場所を飛び、しっかりとグラブを入れる事を意識して、着地を決めると。
ポキポキポキッ!
と、膝の中から気泡が弾けるような音が聞こえてきました。
同時に、ズキッ!という痛みが脳天まで駆け抜けて、足への力がほとんど伝わらなくなりました。
ヤッベ、完全にやっちまった!と思いつつも、現場では場を混乱させないように努めつつ、その日は左足を庇いつつ片足で下山をしました。
ここですぐに病院に駆け込めばよかったんですが、この次の日から数日は人生で最大のスキーイベントがあり、何が何でもその場にいなければいいけなかったので、怪我をした事を隠しつつ、内側靭帯を損傷したときに買ったサポーターでぐるぐる巻きにし、無理やりスキー場に立っていました。
そんな事をしていると、数日が経ち、数週間が経ちしてしまい、だんだんと「あれ、寛解してきたか?」というような気持ちが強くなっていきました。大体一ヶ月もすれば、ちょっと不安があるけれど、何とか滑るくらいならできるかな?といった感覚が戻ってきたのが事実ですし、実際に2ヶ月もすればかなりフリースタイルな動きもできるように回復していきました。
実際にその後再受傷するまでには色々良い活動も出来ました。このあたりの写真は一回目の怪我を終えた後撮ってもらった写真です。
(Photo by 西條聡)
ただ、どうやらこの時に問題の芽は生まれていたようで、この後僕は二年間にわたり、何となく付き纏う膝の不安とともにスキーをすることになりました。
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そして、2020年2月3日。
久しぶりにアルペンブーツを履いて、愛用しているテックビンディングではない普通のビンディングを履いてスキーをしたあの日。
前々からあった不安が現実のものになりました。
やっぱりアルペンビンディングとアルペンブーツはギュインギュインにターン切れるな!と思いながら楽しく斜面を滑り降りてると、
ガコッ!と膝が外れました。
ぬお!!と思ってすぐに停止するとバコッとすぐに膝は戻ったんですが、何だか不安感が非常に増していて、「これ以上はマジでやめといた方がいいよ」と膝が言っていました。
そのあと出来る限り早めに下山しようと思い、あまり負担をかけないように斜面を降っていると、もう一度、ガコッ!と膝が外れ、今後は激痛が走りました。と同時に左足に力が入らなくなり、「これは完全にやっちまった」という気持ちが強くなっていきました。
流石にこれは先送り出来ない痛みと不安だという事で、近くの綜合病院に電話すると、救急であればすぐにMRIを撮ることができるとの事。一刻も早く膝の状況を知りたかった為、仕事を抜け出して病院へ急行し、その日の内にMRIを撮ってもらいました。
残念ながら整形の先生が当日は欠席していらっしゃった為、救急外来のお医者様に見ていただいたところ、「多分前十字靭帯は切れてはいないが、損傷をしていると思う。こればかりは整形の先生の判断を仰がなければならない」という診断でした。実際のその時のMRIの画像がこちら。
靭帯の損傷は専門の先生でも、画像診断だけで判断するのはとても難しいとのことで、この後僕の前十字靭帯は切れてる→切れてない→切れているはずだけどこんなに膝が動かないのはおかしい、みたいな診察の変遷を遂げる事になりました。
その後「多分切れているけど、日常生活が普通に送れて、滑ってみたりして何とかやっていけるなら手術はリスクの伴う行為なので、やらないというのも一つの手なんじゃないか」なんていう意見も先生から出たりもしました。
そもそも前十字靭帯の再建手術は切れました、「切れてますね、はいじゃあすぐにやりましょう!」というわけにはいかないようで、ある程度切れた状態で筋力を回復させて、健常足と損傷足の筋力差を出来る限りなくした状態で手術に望まなければならないとのこと。実際に怪我から手術までは早くても1ヶ月くらいかかるのが定例のようです。その為考える時間は嫌という程与えられました。
僕は運が良かったのか、損傷後2ヶ月もすればかなり動けるようになった為、自転車に乗ったり、山に登って滑ってみたり、歩いたり走ったり、諸々動く事が出来るようになっていたので、「あれ、これこのままだったら普通に生活して、それとなりに滑ったりする分には問題がないんじゃないか?」とも思い始めていました。実際に、切れた後撮ってもらった写真はこちら。
(Photo by 鈴木敬太)
(Photo by 白川勉)
(Photo by 白川勉)
これくらいの動きが出来るなら今後も危ない事しなければいいかなぁ、という思いもありましたが、やはり思いを巡らせると、あと残りの半分以上ある(はず)の人生で本気を出さなきゃ行けないタイミングで、自分には怪我の言い訳があるから本気が出せなかったら後悔するかもなーという漠然の不安があった為、4月の終わり頃、手術を決意しました。
実際に入院前するまでは7回の通院、2回のMRI検査、3回のレントゲン検査、4回の筋力測定がありました。これはコロナウイルスの感染拡大による不要不急の入院や手術が出来なかった世相も反映しての回数とお考えください。
ちなみに僕は手術を決定した時、「まぁフリースキーヤー、結構前十字靭帯の再建手術してる人いるしな。言うてそんな大変な手術じゃ無いんだろ。夏のうちにパッと直して、来シーズン初頭には河野祥伍カムバック!とか言って雪の上に立とう!それなんか格好ええやん!」くらいのクソ軽い気持ちがあったわけなんですが、
これが大間違いである事が、この後ジワジワとわかってきます。
そして、僕の手術日が5月19日に決定しました。