現在ネオワイズ彗星が久しぶりの大彗星となりSNSなどで凄い写真がいっぱいアップされています。
自分ももちろん撮りに行ってますが、梅雨で全く晴れない!
見れても薄曇りであまり良い彗星写真が撮れません。
残念ですが次の彗星を待ちましょう…
ネオワイズ彗星は次回5000年後ですがほかの彗星が巨大化することを願って。
でも一枚だけネオワイズ彗星の写真を貼っときます。薄曇りですが…
さて今回はそんな天体撮影の機材の話です。
以前くんさんが書いていた機材の記事の星空スキーバージョンですね。
ICEY EYES[SONY FE 12-24mm F4 G]
星景写真や星雲や銀河などを撮影するためのカメラと星空スキーを撮影するカメラは同じものを使っています。
Nikon D810A
使用機材はNikonの「D810A」という天体専用カメラ。
最後の「A」がAstrophotographの意味で天体専用となっています。
CANONの場合は小文字の「a」ですね。
ちなみに、メーカー純正の天体専用カメラはニコンはD810AでCANONはミラーレスカメラをベースとしたEOS Raを販売しています。(2020年7月現在)
その他にも多くの天体屋の方は普通のカメラを天体専用カメラに改造して使っています。
改造してくれる業者もあります。
ただし、その改造をしてしまうとメーカーでの保証がなくなり修理ができなくなるので覚悟しましょう(笑)
一応改造を元に戻して貰えばメーカーに出せますが。
なのでメーカーから出ている天体専用カメラのD810AやEOSRaはちょっと高いけど安心できます。
星空には赤い星雲がいっぱい
ではそこまでして天体専用にしたカメラは普通のカメラとは何が違うのか?というと、一番の大きな違いは「赤」が写ること。
Hα線(赤外線)がよく写る特性にしてあります。
カメラには赤外線カットフィルターが付いていますが、そのフィルターを取り外したり天体に特化した特性に変更してあるんです。
なので赤が良く写るんです。
なぜ赤が写らないとダメなのかというと、星空には赤い星雲がいっぱいあります。
冬の星座で有名なオリオン座の周りにも赤い星雲がいっぱいあります。
オリオン座の周りを撮影した写真がこちら。
乗鞍で撮った一枚です。
赤い星雲がいっぱい写ってますよね。
もちろん肉眼では見えません。
これでは分かりにくいのでどこになにがあるか説明を入れてみました。
オリオン座を囲うようにある赤い星雲はバーナードループです。
その上はエンゼルフィッシュ星雲。
エンゼルフィッシュはかなり薄ーい星雲なので簡単には写りません。
オリオン座には有名な「M42オリオン大星雲」があります。
あと馬頭星雲という星雲もあります。
その2つを1枚に一緒に写した写真がこちら。
馬頭星雲は名前の通り馬の頭の形がわかります。
この写真は1枚3分露出を36枚コンポジットしています。
なので露光時間は108分です。
そしてオリオン座の左側にあるのがバラ星雲。
という感じで赤い星雲が多いのですが、普通のカメラで撮影するとこの赤が写りにくいんです。
天体専用カメラの性能と機能
ニコンのD810A天体専用カメラは普通のカメラより4倍赤がよく写るようになってます。
逆にいうと普段使いではちょっと赤みが強く出てしまいます。
夕焼けの時とかは明らかに赤くなってしまいます。
メーカー純正の天体カメラではまだマシですが、改造カメラは普段使えないレベルで赤くなってしまうそうです。
その辺メーカー純正は良くできていて、自分はD850を買うまでは普段の雪山撮影やアクションスポーツの撮影もメインでD810Aを使っていました。
ニコンの天体専用カメラはそれ以外にも天体撮影するために必要な機能が追加されています。
例えば天体撮影は普通の撮影じゃ考えられないぐらい長い時間シャッターを開きます。
普通の撮影ではせいぜい30秒が最長だったりしますが、天体では1枚の撮影で15分間シャターを開けたりします。
D810Aには「M*」(長時間露光マニュアルモード)というモードがあり900秒というシャッタースピードの設定ができるようになっています。
これだけの長時間露光をしたい場合普通ならタイマーリモコンが必要になります。
シャッター”スピード”というほど早くない気がします(笑)
なので天体写真の撮影情報では”露光時間”と書きます。
ちょっと話はそれますが、天体写真は1枚だけ撮って終わりではなく長時間露光で撮影した写真を何枚も重ねて(コンポジットして)編集します。
そうすることにより、淡い星雲を炙り出すときに画質が劣化するのを防ぎます。
この炙り出しに関しては話が長くなるのでここでは割愛しますが、そういう理由で天体の写真では4時間露光というのも普通にあります。(1枚5分露光の写真を48枚コンポジットなど)
他にもこれは使っててそう思うってだけですが、ノイズに強いです。
普通のカメラのD850で撮影した星景写真とD810Aで撮影した星景写真では編集した時にノイズの発生が全然違います。
だから星空スキーでもこの天体専用カメラを使うようにしています。
星空スキーでの使用
では天体専用のカメラを使っていることを頭に置いて星空スキーの写真を見て見ましょう。
実際には星空スキーではノイズに強いということ以外はあまり恩恵を受けていませんが…
なるべく恩恵を受けてそうな写真を紹介します(笑)
まず乗鞍で撮影した一枚です。Skierは斉藤悠士
58mmで撮影してスキーヤーの後ろに大きくオリオン座を入れた写真です。
この撮影では星空をあえてボカしているので分かりにくいですが先程説明した、オリオン大星雲や馬頭星雲、バーナードループがうっすらと写っています。
ここは街灯があり明るかったのでシャッタスピード15秒、ISO1600、f1.8が限界でしたが、さすが天体専用カメラですこの設定でここまで写るとは思いませんでした。
ちなみにこの設定が限界だったというのは、街灯があったからこれ以上シャッターを開けると雪面が明るくなってしまいスキーヤーが透けるからです。
街灯がなければ25秒とか30秒とかシャッターを開けられます。
これは天の川での星空スキー写真ですが、天の川の中に赤い星雲も写っています。
この時もベストな条件ではなく、月が上がってくる寸前だったので空が全体的に明るくなっていました。
この時の設定はシャッタースピード30秒、ISO800、f5でした。
f5まで絞ったのは2人で飛ぶのでなるべく2人共にピントが合うように絞っています。
そしてこの時は赤道儀を使っていたので、シャッタースピードを長くして感度を下げています。
※赤道儀は星を追尾してくれる機械で長時間シャッターを開けても星が線になりません。
星空を撮る環境
ちなみに天体撮影をする場合カメラも大事ですが、光害のない真っ暗な場所に行くのが一番大事だと思います。
例に出した乗鞍高原の星景写真にエンゼルフィッシュ星雲が薄く写ったのも、真っ暗な場所だったというのがいちばんの要因です。
いくら機材が良くても撮影環境が悪いといいものは撮れません。
光害カットフィルターというものも実はありますが、それでも暗い場所に行ったほうがいいです。
そういう星空を撮れる場所に行ってから、さらに天体専用カメラだと最高ですね。
あ、もちろん月がないことと雲がない快晴というのは星空撮影では大前提ですよ。
今回紹介した写真以外の天体写真はホームページの方にも載せてるので是非みてください!
www.satoshisaijo.com
というわけで、今回は星空スキー撮影にも使っている天体専用カメラの紹介でした!
July 24, 2020/COLUMN/カメラカメラマン天体星空星空スキー